マネーボールとZOHOの採用の共通点 – 常識を覆す採用戦略で強いチームを作り上げる




みなさん、

「マネーボール」

という本をご存知でしょうか?2003年にアメリカで、2004年に日本でも出版された本です。メジャーリーグ球団、オークランド・アスレチックスのゼネラルマネージャーを務めるビリー・ビーン氏の半生とアスレチックスの快進撃を描いています。

映画化もされており、来月11月に日本でも公開

されます。


さて、いつもはクラウドサービス「Zoho」の活用法などを紹介しているこのブログでなぜマネーボール?

と思われた方がいらっしゃるかもしれませんね。
マネーボールとZOHO、
野球とITという全く違う業界ですが、実は共通点があるのです。それは、今までに見向きもされなかった人材を採用するという点です。
 
この点は、当社のCEOであるSridhar Vembu(シュリダー・ベンブ)の

インタビュー記事

で指摘されていましたが、非常に興味深い点ですので詳しく説明したいと思います。

以下では、それぞれの採用戦略について紹介し、共通点について説明してます。

■「マネーボール」における選手獲得アプローチ

「マネーボール」で最も興味深いのは、メジャーリーグで最低クラスの予算しかないオークランド・アスレチックスが、いかにしてプレーオフに進出できるような強いチームを作れたのかという点です。

アスレチックスの予算は潤沢ではなく、選手の年俸の総額を計算すると、下から数えた方が早いくらいです。それにも関わらず、良好な成績におさめるまでに変わりました。特に、2002年には全球団で最高の勝率を記録したそうです。年棒総額が1位だったニューヨーク・ヤンキースと比べると3分の1の予算です。それでこの勝率を達成したのは驚異的ですね。

それでは、一体どのようにしてこのようなチームを築けたのでしょうか。その鍵が、ビリー・ビーンが採用した考え方で、「マネーボール理論」と呼ばれているものです。この議論論では統計学を駆使し、今までの常識にとらわれずに何が重要かを分析しています。

アスレチックスは、この分析結果を応用し、今までの常識と異なる視点で選手を評価し、獲得しました。その中には、それまでの球界の常識では評価の低い選手も多く含まれていました。

それでは、どのように違うのでしょうか。例えば、打者の評価を見てみましょう。通常、打者を評価する時は打率が真っ先に思い浮かぶかもしれません(私もそうでした)。しかし、アスレチックスでは、出塁率や長打率、選球眼が評価されます。

具体的な例として、スコット・ハッテバーグという選手の例を見てみましょう。この選手は非常に良い選球眼を持っています。しかし、元々所属していたレッドソックスでは、ストライクを見逃すと怒声を浴びていました。レッドソックスでは、積極的に振っていくことが評価されており、いくらボール球を見極めて四球で出塁しても評価されなかったのです。むしろ、無気力すぎると評価されていました

これに対し、アスレチックスでは出塁率や敵のピッチャーを疲れさせたかどうか、すなわち、打席を有効に利用したかどうかが評価されています。むやみやたらに振っていくよりも慎重に打席に臨む選手が評価され、3打数無安打、ライナー2つに四球1つでもよくやったと評価されます。その結果、初球を振らない率ア・リーグ第1位、見送り率リーグ第3位となり、高い出塁率を叩き出したのです

また、ドラフトでも、高校生選手よりも大学生選手を優先的に指名しています。それまでの野球界の常識では、「高校生選手のほうが将来スーパースターになる可能性が高い」(「マネー・ボール」p129)と信じられていました。しかし、ビリー・ビーンはドラフトの歴史を調べ、「高校生選手より大学生選手を指名したほうが、はるかに、笑ってしまうほどはるかに、価値のある投資といえる」(「マネー・ボール」p129)ことをつかみ、この逆を行ったのです。

このように、アスレチックスは今まで見向きもされなかった選手達を獲得し、強いチームを作り上げていったのです。


■ZOHOの採用アプローチ

それでは、ZOHOの採用アプローチはどのようなものでしょうか?

こちらの記事

の中でも述べられていますが、「ダイヤモンドの原石を採用する」( Hire the diamonds in the rough)という言葉がZOHOの採用アプローチをよくあらわしています。

ダイヤモンドではなくダイヤモンドの原石、学歴で言えば、有名な大学ではなく二流、三流と見られるような大学からも積極的に採用しています。また、大学卒業者だけでなく、高校卒業者からも積極的に採用しています。

ZOHOの開発センターがあるインドでは、一般的には有名大学の学生の方が就職に有利です(これまでの日本でも同じですね)。企業側は、有名大学の卒業生を積極的に採用しようとします。これに対し、ZOHOでは、学歴や出身大学にこだわらずに採用を行っているのです。
ZOHOがこうした採用戦略をとったのは、当初は必要に迫られたためでした。インドの学生は有名企業志向が強く、ZOHOのような新しい企業では有名大学からの採用をしようとしても簡単にはいきません(今でこそクラウドの分野ではGoogleやMicrosoftと並んで語られるようになっていますが当時はほとんど知名度がありませんでした)

そこで、採用の考え方について問い直し、「成績や卒業大学で測れるような学校でのパフォーマンスと、実際の仕事でのパフォーマンスの間には相関関係は本当にあるのだろうか?」と考えてみました。この考え方のもと、学歴に関係なく採用を進めてみたところ、有名大学の学生とそれ以外の学生のパフォーマンスには大きな差は見られないことが分かりました。

この考え方をさらに推し進め、「高校卒業後の学生を採用して、私達自身でトレーニングしたらどうだろうか?」と考えるようになりました。こうして社内大学を設立し、高校卒業者を自社の社内大学で教育し採用する仕組みを整えました。これが
ゾーホー・ユニバーシティー

です。

この大学には、大学に行けないような経済的に厳しい家庭の子供でも入学することができます。有名大学を出ていなくても、若くても、高い素質やモチベーションがあると判断されれば、教育や採用の機会を得られるような仕組みになっています。
こうした採用戦略の結果、ZOHOでは、他の企業では採用されなかったような人材が数多く活躍しています。その代表格がSaran Babu(サラン・バブ)です。彼は元々は家計を助けるため、17歳の時にパートタイムの仕事に就く予定でしたが、その時期がちょうどゾーホー・ユニバーシティー設立と重なり、1期生として入学しました。

それから5年経ち、あるチームでリーダーの仕事をしています。

つまり、22歳なので、大学からの新卒と同じ年ですでにリーダーになっているのです。仕事熱心で人間性も素晴らしく、皆からの尊敬も集めています。
 
今では社員のおよそ10%がゾーホー・ユニバーシティー出身者で占められており、サランのように活躍する社員がたくさん出てきています。また、それ以外でも、有名大学出身以外の社員がほとんどを占めています。こうした採用アプローチによる社員によって成長を続けてきているのです。

■マネーボールとZOHOの採用

以上で、マネーボールとZOHOの採用に関する考え方を見てきました。マネーボールによるアスレチックスとZOHOの採用アプローチの考え方は次の点が共通しています。

  • 従来の常識にとらわれない評価軸で採用候補者を評価
  • 制約条件を乗り越えるためにユニークなアプローチを採用
  • 考え方を変えるに当たって内部から反対があるもトップの強い信念で推進
上で見てきたように、アスレチックスとZOHOでは、従来の常識とは異なった採用の考え方をとり、他では見向きもされなかった人を採用し、そうした人が実際に活躍している点が共通しています。

また、両者とも、この考え方をとるにいたったのが制約条件を乗り越えるためであったという点も共通しています。アスレチックスの場合は予算、ZOHOの場合は知名度の面で他のチームや企業に比べて不利でした。この不利を理由にしてあきらめず、本質を見極め、自分たちに必要な人材を獲得していった結果、成功につながっているのです。

最後に、両者ともこうした考え方を採用するに当たって、社内外から反対があったのにトップの熱意で推進したところも同じです。新しい考え方は、それがどんなに良いものであろうと反対がつきものです。そこを押し切って結果を出し、浸透させていったトップの信念・熱意があったという点でも共通しています。

このようにして、アスレチックスもZOHOも、常識を覆す採用戦略で強いチームを作り上げてきたのです

さらに詳しくZohoの採用について知りたい!という方は以下のマイコミジャーナルやブログの記事をぜひご参照ください!


また、マネーボール理論の詳細については、Wikipediaのページや日経の特設サイトに詳しく記載されています。

本の邦訳はすでに文庫版も出ています。
冒頭にも述べましたように、マネーボールの映画も11月に公開されます。楽しみにしましょう!

ZOHOの採用を予習しておくと二倍楽しめるかもしれません!

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  • Comments (2)

    • takahiro.hozumi
    • November 5th, 2011

    とても興味深い取り組みで感心しました。
    マネーボールを挙げているのは目立ちにくい数字を根拠に良い選考をするというアナロジーだと思います。
    私が気になるのは、学ぶ姿勢やモチベーションを面接で判断するというのは主観的であり測定可能な数字ではないように思える点です。
    それともここでの趣旨は、「出身によって能力の差はない、よって (極端に言えば)ランダムに選んでも教育を行うことで良い採用ができる」ということなのでしょうか。

    • Akiyoshi Matsumoto
    • November 7th, 2011

    takahiro.hozumiさん、コメント誠にありがとうございます!とても考えさせられるコメントでした。

    「学ぶ姿勢やモチベーションを面接で判断するというのは主観的であり測定可能な数字ではないように思える」という点は仰るとおりで私も同じようなことを感じました。

    気になったので、以前、開発センターのマネージャーやCEOにも聞いたことがあります。そこでの答えは「直観」で判断するということでした。測定可能な客観的な判断基準を求めるというよりは、採用する人の直観を信じるというスタンスでやっているようです。

    ただ、最終的な判断はあくまで主観や直観にもとづくとは言っていますが、学校での様子(先生からのヒアリング)や成績、また、簡易的なテストも行った上で判断しているので、すべて直観的に判断するというよりは、これらのデータもふまえた上で判断していくということのようです。

    ですので、ランダムに選んでも良いというよりは、やはり当社に必要な能力や人間性を持っているかどうかを元に判断するという考え方だと思います。

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