「エクセルで顧客管理をしていたけれど、取引量が増えてきて限界を迎えている」「紙ベースからCRMシステムでの管理に切り替えたいけど、ITには疎くてよくわからない」「CRM製品は、うちのような中小企業には使いこなせないのでは」といった悩みを抱える小売業の経営者は多い。現状の顧客管理方法でも業務は回せるし、なんとなくこれまでのやり方を継続しているという企業も多いのではないだろうか。
東京は北青山に店舗を構えるジュエリー・リフォーム専門店(ラスフローラ青山店)を運営するレフノン株式会社も、そんな悩みを抱える中小企業だった。
「以前使っていたシステムでは、お客さまの情報をスムーズに取り出せませんでした。そのせいで満足な接客ができず、クレームをもらうこともありました」と語るのは、店長を務める村田さん。
これ以上課題を見過ごすことはできないと現場から声が上がり、社長自ら様々なセミナーで情報を集め、クラウド型顧客管理システム「Zoho CRM(ゾーホー・シーアールエム)」の導入を決意。お客さまからの信頼を勝ち得るために、全社員を巻き込んだCRMプロジェクトが始まった。Zoho CRM導入後の今、「顧客管理の煩わしさから解放され、接客に集中できるようになったことが一番嬉しい」と村田さんは言う。
本記事では、お店が抱えていた課題やCRM選びのポイント、導入からZoho CRMを効果的に活用するポイントに至るまでの詳細を詳しくまとめた。ぜひ御社のビジネスへ活用するヒントにしてもらいたい。
1.御社のビジネスの概要を教えてください。
単なるジュエリーの修理ではない。お客さまの想いも一緒に預かるのが私たちの仕事。
2.どのような狙いで Zoho CRM を導入されたのでしょうか。
お客さまから電話がきても手元に情報が取り出せない!接客スタッフが感じた一番の課題とは?
3.どのような流れで Zoho CRM を導入したのですか。
様々なセミナーに参加し比較検討した結果、Zoho CRM に決めた4つの理由
4.実際現場ではどのように Zoho CRM を使っていますか。
顧客情報を管理するだけではもったいない! 情報はうまく活用し、信頼と安心を醸成する
5.Zoho CRM を導入し、どのような効果がありましたか。
Zoho CRM と他ツールを連携することで、伝票管理やマーケティングも大幅に効率アップ
6.今後はどのような取り組みを目指していますか
「守り」の CRM から「攻め」の総合システムへと変化すべく、更なるカスタマイズを模索中
単なるジュエリーの修理ではない。お客さまの想いも一緒に預かるのが私たちの仕事。
-御社のビジネスの概要を教えてください。
弊社はジュエリーリフォームの専門店です。ジュエリーや時計の修理に加え、お祖母様、お母様から譲り受けられた指輪を新しく婚約指輪などに作り替えたりしています。私は店長を務めております。主な業務は接客ですが、その他スタッフのマネジメントや集客なども担当しております。
ジュエリーを一度販売したら終わりではなく、メンテナンスや加工をして、お客さまとは長くお付き合いすることとなります。ジュエリーを単なる商品として扱うのではなく、親から子へと受け継がれる想いも一緒にお預かりします。「世界に一つだけの大切なジュエリーだからこそ、ラスフローラにお願いしたい」と思っていただくことが、接客をする上で非常に大切な心構えとなります。
お客さまから電話がきても手元に情報が取り出せない!接客スタッフが感じた一番の課題とは?
-どのような狙いで Zoho CRM を導入されたのでしょうか。
Zoho CRMを導入する前は、来店前の情報確認や受電時など、必要な情報を必要な時に取り出せないことが大きな課題でした。以前導入していた顧客管理システムは、複数のパソコンで同時に利用できない仕様でした。例えばお客さまから電話が同時にかかってきても、誰かがシステムを使っている間、自分のパソコンで顧客情報を見ることが出来ないのです。お客さまを電話上でお待たせしてしまうことでクレームに繋がったり、新規問い合わせに満足な対応が出来ず、機会ロスが生まれていました。
また電話や接客だけでなく、来店前の準備や閉店後の場面においても、不便なことが多々ありました。納期管理や見積もりの返事をメールでしたくても、他の人が使用している間、自分の作業を進めることが出来ないのです。それでも何とかお店を回していたのですが、スタッフの人数が6~7名に増えた時点で、この仕組みはもう限界だと感じました。
私たちの専門はジュエリーの販売ではなく、メンテナンスや加工です。商品を一度売ったら終わりというわけではなく、世代を超えた長いお付き合いとなります。ジュエリーはただでさえ高価なものですが、そこに親子代々の想いが加わり更に価値の高い品物へと生まれ変わっていきます。そのような大切な品物を預けるわけですから、当然安心感・信頼感を持っていただくことがビジネスの肝となります。
信頼を醸成するためには、お客さまの細かい情報を常に把握していることが大切です。必要な時に必要な情報を引き出せる顧客管理システムの導入は最重要課題でした。
様々なセミナーに参加し比較検討した結果、Zoho CRM に決めた4つの理由
-どのような流れで Zoho CRM を導入したのですか。
こうした課題は、社員の努力だけでは解決できない問題でした。そこで上司や社長に相談したところ、すぐに新たなCRM導入に向けて動くことになりました。
まずは情報収集のため、弊社の代表が様々なCRM商品の説明会に参加しました。Zohoのセミナーに参加した後、「ZohoのCRMが一番使いやすそうだ」と社長が強く勧めてきたこともあり、導入することになりました。
他社製品も含め色々と比較検討もしましたが、Zoho CRMにした一番の決め手は総合的な使いやすさです。
具体的には
- 検索スピード、更新スピートが速いこと
- IT知識が乏しいスタッフでも使いやすいこと
- チャットアプリと連携できること
- データ入出力(CSV)が可能であること
- キャンペーン、アクセス解析、電話連携(CTI ※1)など今後を見据えた拡張性があること
といった条件をクリアできるかどうか。
私たちの本業は接客です。接客の最中に、システムの操作が難しいことによって対応が疎かになってしまっては本末転倒。何よりも簡単でスピーディーに操作できることが決めた理由でした。
全システムデータの整備から入ったため、データの移行が終わるまでに半年ほどかかりました。元々10万件を超える伝票と何千人というお客さまがいましたので、全データの移行は大変でした。しかし「以前の不便さが解消されるなら頑張ろう」と、スタッフ一丸となって取り組みました。
新たなツールを導入しても、実際に使われなければ意味がありません。「なぜ新たなCRMを導入するのか」という目的を予め全員で共有していた点が、スムーズな導入につながったと思います。実際とても使い勝手がよく、想像以上に業務効率が改善されました。
注釈:
※1:電話連携(CTI:Computer Telephony Integration): 電話とコンピュータの統合システムのことです。電話がかかってきたら、パソコン画面に顧客情報を表示させるシステムのことです。
顧客情報を管理するだけではもったいない! 情報はうまく活用し、信頼と安心を醸成する
-実際現場ではどのように Zoho CRM を使っていますか。
一番Zoho CRMを使う場面は、やはり電話対応においてです。弊社ではワンコールで電話を取るようにしており、すぐに名前をお聞きします。Zoho CRMは自分のパソコンで常に開いておりますので、お客さまの名前を聞くと同時に、検索窓から名前を検索し、手元に情報を用意します。以前はお客さまの名前を全て正しく入力しないと情報を取り出せなかったのですが、Zoho CRMは完全一致でなくてもヒットするのでお客さまを待たせることがなくなりました。名前以外に、気になるワードで検索できるのも便利です。
画面に写し出された情報を見て、「○時からご予約の〇〇様ですね」などと一声添えるようにしています。するとお客さまは「あ、自分と真摯に向き合ってくれている。丁寧な接客だな」と安心してくださります。また来店の予定管理もでき、約束時刻が近づくとアラートのポップアップが表示されます。おかげで他の作業に熱中してしまい、うっかり予定を見過ごすことはなくなりました。
予約スケジュールには、何人で来店するか、どんなデザインを希望されているかなど、長文を記入することも可能です。また基本情報機能では、家族構成やペットの有無など、細かい情報も管理できます。また顧客ごとに情報を管理できるので、担当スタッフが休んでいても他のスタッフが対応することできます。スタッフ全員がお客さまのことを理解しているという事実が、安心感・信頼感へと繋がっていると思います。
Zoho CRM と他ツールを連携することで、伝票管理やマーケティングも大幅に効率アップ
-Zoho CRM を導入し、どのような効果がありましたか。
大幅な時間短縮により、接客という本来の仕事に集中して時間を使えるように なったことが一番の効果だと思います。
お客さまが来店されると、まず受付で伝票を記入していただきます。以前でしたら、その後お預かりしたジュエリーを一点一点カメラで撮影し、画像を自分たちで印刷し、紙の伝票と共に管理していました。
例えば、1日5点の品物をお預かりするとします。5日分だと週で平均25点、1ヶ月だと100点になり、お店全体では、数百点もの品物をお預かりすることになります。これら全ての品物を紙で管理するのは非常に煩雑で、時間もかかります。
そこで弊社では、Office Lens(※2)という画像取り込みアプリも同時に導入しました。受付で伝票を書いて頂いたら、Office Lensを使って伝票を撮影します。伝票の内容をZoho CRMに入力するのは、ベトナムの会社にアウトソーシングしています。次の日出社した時点で、新しいお客さまのデータは全て更新されている状態ですので、感覚的には2倍くらい効率が上がったと感じます。
社内のコミュニケーションには、Slack(※3)というチャットツールも利用しています。重要な接客フォローが必要なお客さまが来店される前や、強い要望を頂いた際にその情報をZoho CRMからスタッフのSlackに送り情報共有しています。こうした他のツールとも連携を取れることがZoho CRMに決めた理由でもあります。
注釈:
※2 Office Lence(オフィスレンズ):スマホやタブレットで撮影した書類や画像を、多様な形式の文書に記録・保存できるアプリ。
※3 Slack(スラック):ビジネス向けのチャットツール。パソコン、スマホ、タブレットから閲覧でき、ファイルの共有なども簡単にできる。
「守り」の CRM から「攻め」の総合システムへと変化すべく、更なるカスタマイズを模索中
-今後はどのような取り組みを目指していますか
Zoho CRMは企業のニーズに応じて常に進化を遂げているので、使っている私たちも楽しいです。色々なアプリと連携したり、こちらのニーズに合わせてカスタマイズできるので、日々使いやすくなっています。
今後の活用としては、電話連携(CTI)を考えています。電話連携をすることによって、受電時の検索すら不要にし、更に応対スピードを上げることが出来るからです。今はどのような電話連携が当社にとってベストなのか、仕組みを検討中です。
弊社では、Zoho CRMを単なる顧客情報管理システムとして終わらせるのではなく、他の用途へと拡張した運用ができると自負しています。更なる改善を進めて、「ラスフローラさんならまた安心してお願いしたい」とお客さまに言ってもらえるようなお店を作っていきたいと思います。
〈取材企業情報〉
会社名 | レフノン株式会社(ラスフローラ青山店) |
資本金 | 20,000,000円 |
代表者 | 代表取締役社長 中村 忍 |
業種 | 宝石(貴金属・宝飾・アクセサリー)や時計などの修理・販売をはじめとした総合サービス業 |
所在地 | 東京都港区北青山3−3−7 2F |
ホームページアドレス | https://www.rusflora.com |
〈プロジェクトサマリ〉
導入前の課題 | l 来店前の情報確認や受電時に、必要な情報を取り出せない
l クレームへ発展したり、販売の機会ロスが発生 l 複数スタッフがシステムを同時利用できないことによるタイムロス |
導入の狙い
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l 顧客満足度の向上(接客品質の向上)
l 現場業務の効率化 |
選定時に重視したポイント | l 検索スピード、更新スピートの速さ
l IT知識が乏しいスタッフでも使える操作性 l 他ツールとの連携(HPの問合せフォーム、チャットアプリ、データのCSV出力など) l キャンペーン、アクセス解析、電話連携(CTI)など、運用の拡張性 |
決裁担当者 | 社長 |
導入の流れ
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l 現場からのボトムアップで課題を吸い上げ
l ウェブやセミナーによる情報収集 l 業務設計 l データ移行 l スタッフの教育、稼動 |
導入の効果 | l 顧客情報の検索機能向上による、接客スピード・質の改善
l 顧客情報を入力する時間の短縮 l 他ツールとの連携による伝票管理の改善 l DM発送などマーケティングへの拡張 |
今後の取組み予定 | l 電話連携(CTI)の導入 |