学生情報の一元化で教員間の情報共有を実現し、学生主軸の教育体制へと革新。筑波大学法科大学院導入事例

「学生も教員も昼間いないのでコミュニケーションもほとんどなく、それぞれの教員が学生一人一人の側面だけを見て手探りでやっているような状況が続いていた。教員も学生もお互いに居合わせる時間がほとんどないという特殊な状況で、情報共有する場ができたことは非常に大きいことだと思いますね。」(筑波大学法科大学院専攻長 大石和彦 氏)

事業内容:
平成17年度に開設された法科大学院。特徴は社会人を主な対象としており、夜間・土曜に通学できる点。
筑波大学における社会人法学教育の豊富な経験と実績を生かして、キャリア転換を目指す社会人のための夜間開講の法科大学院を設置。
社会的な需要に応え、高度に専門性を有する法曹の育成を目指す。

 

< 課題 >コミュニケーションが取りづらい環境で生じる学生評価のズレ。
一元化による情報共有が必要だった。

中学校や高校とは異なり、大学では一人ひとりの学生にあまり目配りをしないことから放牧型(※)の教育と言われている。
しかし、法科大学院の場合は人数も少なく、また教員と学生の距離も近いことから比較的放牧型ではないという。
導入前は、同大学院も放牧型だった。大石氏は次のように当時を振り返る。
「夜学のため学生も教員も一日中いないので、学生に関する情報がほとんど共有されていなかった。」
夜間及び土曜日開講という体制も関連し、教員同士のコミュニケーションはあまり取れない。
学生の評価が教員間で一致しないことがあっても、なぜ一致しないのか、何に起因するのか把握するのが困難であったという。

 

筑波大学法科大学院が目指すのは、合格者の増加。
そのためには、学生一人一人に合わせた細やかなフォローが欠かせない。学生を軸にした情報の一元管理の必要性を実感した。

 

まずは学内で実現可能なシステムはないか確認を行った同学院。
「個々の学生を軸にして統一的に情報を引き出すシステムがあるかどうかを当然ながら調査した。
筑波大学に教育クラウド室という、文明の利器を用いて教育に役立てるための部署があり、聞いたのですが、学生一人一人を軸にした情報の取り出しが今の所できない」と大石氏は振り返る。
学内システムは学士課程を念頭に置き、授業を軸にしたシステムになっていたためだ。
そこで、民間サービスの検討を開始。普通の会社でいうとお客様を軸にした情報の取り出しに特化したものは何かと調べた時に顧客管理システム(CRM)にたどり着いたのだと言う。

 

< 導入 >予算やニーズ、セキュリティ、必要条件全てを満たしたZoho CRM。誰でも使える設計で年代差を超えて浸透。

CRMに求める条件は非常に単純で、第三者から絶対に盗み見られないというセキュリティ、厳しい予算条件をクリアできる価格。最後に教員が全学生の情報を引き出せる仕組みであったという。
セキュリティの内部調査もクリアし、「予算やニーズ、セキュリティの観点で、必要条件全てを満たしたのがZoho CRMだった」と大石氏は語る。
またプランの選定に至っては、「どのプランでいくのが我々のニーズに合うのか、あまり余計なものがあっても料金がかかるだけで、ただあまりお金をケチっても、機能がチープであると我々のニーズを満たさないというところがありますから、どの程度の情報量を詰め込めるのか、そういうところも見ながら、プランを決めた」と当時を振り返る。

 

並行して、学生調査票を配布し学生の意識調査と面談を実施。
基本情報に加え、通学時間や得意・苦手科目などの自己評価、1日の勉強時間などを中心に学生から収集。集まった調査票は面談時に利用し、CRM上にデータをアップデートし活用している。「夜間と土曜日しか学生も来ませんので、あまり時間をかけて一人一人に面談できません。面談時間の短縮ということも兼ねて事前に書いてもらって、CRM上にアップロードし共有している。面談結果については教員が書き込むという形にしています」と学生委員長である直井氏は語る。

 

学内での浸透のポイントは、どの教員でも使えるように配慮された設計にある。
「使う側のハードルを高くしすぎない、というのは我々世代の組織では結構重要で、使いこなせる比較的若い世代と、そういうものが得意とは限らない上の世代など色々なので、あまりハードルを高くできない、というのはありますね」と大石氏は語り、CRMでは項目を必要以上に追加せず、メモ機能を活用しているそうだ。
また、直井氏が旗振り役となり、入力状況に応じて教員への声掛けを行うなど、学内で運用されるよう体制を築いている点も、活用が進んでいる一因である。

 

 

< 効果 > 導入により、学生一人一人を個人指導する、という意識が高まった。

導入後一番効果を感じているのは、情報共有により学生情報をいつでも確認できる点のようだ。
というのも、成績表自体へのアクセス権限は全教員には与えられていないことから、成績の悪い学生は全科目の成績が悪いのか、もしくは自分の担当科目のみ悪いのか、といった情報がこれまで確認できなかった。

 

それがCRM上の情報をまとめられるようになったことで「気になる学生がいれば他の教員が書き込んでいる情報を見ながら、学生個人個人に合った形で指導していくということに使っています」と直井氏は語る。
また、同じ科目であっても学年によって担当教員が変わることから、「引き継ぎにも役立つ」と両者は語る。個々の学生の学習状況などを残せるので、新しく受け持つ学生の情報を事前にチェックするなど、日々の活用も進んでいるようだ。

 

効果はCRMに限った話ではない。
CRM導入で指導体制が強化されたことにより、教員の意識が高まったほか、学生側も変化を感じていたようだ。
直井氏は次のように語る。
「これまでは面談自体をあまりやっていなかったが、Zoho CRMを導入したことによって、学生一人ひとりをちゃんと指導するという意識が高まった。個人面談が浸透した、という部分は違いますね。学生側も、指導されている、見られているという意識はかなり強くなっていると思います。面談実施への拒絶感はなく、好意的な印象。最終目標は合格者増ですが、学生のもともとのスペックの割には合格率が低い印象もあり、指導によって合格者を増やせるのであれば活用するに越したことはない。個々の学生のきめ細やかな管理や指導という形で使っています。」
「使い続けて合格者が出たら、データに残しておけばこういう勉強したから合格したっていうのが見えるかもしれないですよね。チューターゼミ使っているとか、勉強会に参加しているとか、その区分だけでもやっておけば、そういうもの積極的に使った方が合格率高いとか、逆に低いとかですね。経年的にそういう使い方ができますね」と語る直井氏は、合格者の成功パターンの分析にも意欲的だ。

 

もしZoho CRMを導入していなかったらまさに放牧型のままだったと大石氏は振り返る。
「学生も教員も昼間いないのでコミュニケーションもほとんどなく、それぞれの教員が学生一人一人の側面だけを見て手探りでやっているような状況が続いていた。教員も学生もお互いに居合わせる時間がほとんどないという特殊な状況で、情報共有する場ができたことは非常に大きいことだと思いますね。」と評していただき、学生主軸の教育体制へと革新する同大学院の熱意を感じた。

※放牧型とは
中学校や高校は担任制のため、クラスの一人ひとりの生徒に対してきめ細かなフォローを行うのが一般的だが、大学の場合は基本的に専任の教員はつかず、一人ひとりの学生に対して目配りしないことから、俗に「放牧型」と呼ばれている。

※本文中の筑波大学法科大学院に関する役職名などの情報は2016年度時点のものです。

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